2005年09月10日

父と暮せば

B0007WWG0S父と暮せば 通常版
宮沢りえ 井上ひさし 黒木和雄

バンダイビジュアル 2005-06-24
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神保町に岩波ホールというちいさな映画館がある。
単館シアターの走りと言われるところだ。
背もたれにクッションのついた椅子が快適で、年配の人が多い。
そこで「父と暮せば」を観た。

広島原爆から3年後、家族も友達も失ってひとり生き残ったことに罪悪感を覚えながら毎日を生きている宮沢りえ演じる主人公のところに、原田芳雄演じる父親の幽霊が娘の恋の応援団長として現れるようになる、ストーリー。
広島弁の心地よさと、宮沢りえのかわいらしさ(本当にかわいい!)と原田さんの愛嬌が、やりきれないテーマを包みこんで、救いのある映画だった。
原爆をテーマに扱っているけれど、記録映画のように直接的な描写は控えめだ。
登場人物の会話の端々から、時折挿入される当時の映像から、登場してくる小物から淡々と惨状が語られていく。

どんどろさん(雷)を怖がる娘に父親が聞く。
「女学校の頃はおてんばで通ったお前が、いつからどんどろさんを怖がるようになったんじゃ」
「ほじゃなぁ、いつ頃かねぇ」
娘が無邪気に首を傾げる。
「三年くらい前からじゃのぅ」
「そりゃお前、あのピカのせいじゃ」
「そういえばそうかもしれんねぇ」

瓦礫ばかりの道、雨漏りのする家屋、煤こげた街並みの中、ピカから3年経ったヒロシマでは、こんな風に表面上は「普通」の暮しが営まれていたのかもしれない。
もちろん意識からピカを追いやって封じこめて、どうにか平静を保っているのだとしても。

「おとったん、ありがとありました」
映画の最後、娘の行く末を見届けて出て行こうとする父親の背中を見送りながら娘が言う。
その、言葉の温かさ。凛と背筋を伸ばして、やわらかな笑顔で。
あぁ人は美しいな、と思った。
あの時も、そして今も世界のどこかで新たな惨劇を招いているのは同じ人間なのに、
それでもこの美しさにどこか安堵する。
 
今年は終戦から60周年。
できることがないとしても「感覚」は鈍らせてはいけない。
自戒をこめて。
posted by さやか at 02:24| Comment(1) | TrackBack(2) | 邦画(映画) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めまして。
私も今日この映画を観ました。

彼女のように自分の思いを意識的にだか無意識にだか
押し込めて生きてきた人がきっと今も生きて
いらっしゃると思うと、胸が詰まります。

宮沢りえの「おとったん」と呼ぶ声や、「幸せになったらいけない」と語るいじらしい姿に、心を打たれました。

TBさせて頂きます☆
Posted by batako at 2006年03月02日 15:19
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「父と暮せば」
Excerpt:  父と暮せば 通常版 「父と暮せば」 ★★★★ THE FACE OF JIZO (2004年日本) 監督:黒木和雄 原作:井上ひさし キャスト:宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信 公式..
Weblog: NUMB
Tracked: 2005-11-27 19:49

父と暮せば ★★★★☆
Excerpt: 宮沢りえ、原田芳雄、そして黒木和雄 3人の表現力に脱帽です。 『父と暮せば』 近所のレンタルビデオで100円レンタルをやっていたので 久々に借りて来ました☆ ..
Weblog: 1日1本!映画好き嫌い日記
Tracked: 2006-03-02 15:24
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