2006年11月29日

ありのままを、記録する

クリント・イーストウッドは、私にとってちょっといわくのある、特別な存在だ。
作品が好きで好きで……というわけではないのだけれど(きちんと理解できてるか分からないし)、彼の映画が公開されるとなると、絶対見に行かなきゃ!という思いにかきたてられる。
「父親たちの星条旗」も、見に行かなきゃ!とそわそわしていて、やっと先週末、見に行けた。
今、話題になっている「硫黄島からの手紙」と対になる物語だ。

第二次世界大戦で、大きな転機となった硫黄島の闘いを、アメリカ側の視点(=「父親たちの星条旗」)と日本側の視点(=「硫黄島からの手紙」)で描く二部作。アメリカが5日で終結すると思っていたこの闘いは、日本のすさまじい抵抗によって、36日間続いた。恥ずかしながら、そんな闘いがあったことすら、私は知らなかった。

勝利のシンボルとして星条旗を掲げているアメリカ兵の写真が、国民の士気を高めるため、アメリカ全土に流される。
旗を掲げた兵士のうち、生き残った3人の兵士は連れ戻され、英雄扱いを受けながら、資金集めに利用される。その最中にも硫黄島では激戦が続いている。

硫黄島での戦闘シーンは、灰色の色彩に包まれていて、大砲の放火や、飛び散る血だけが、妙に鮮やかだ。闘の映像が延々と続く一方で、アメリカで資金集めのため、ショウや講演を行なう3人の姿も、等しく映し出される。

戦争のむごたらしい映像から目を背けたくて、アメリカ本土の様子に映像が行くと、一瞬ほっとする。でも、息苦しくなってしまう。なぜだろう…と思ったけど、すぐに分かった。アメリカで繰り広げられているデモンストレーションに息が詰まるのだ。そこには、兵士たちの悲惨な現状が伝えられることはなく、浮ついたパーティや社交や、戦争に行く必要のない、特権階級のエゴや欺瞞が覗いているから。
そんなものを見るくらいなら、戦闘シーンを見ていたほうが、まだマシだと思えるなんて。

戦争を扱って、泣かせる映画にするのはとても簡単だと思う。
それぞれの感情や、お互いの関係を少し丁寧に描けばいい。
でも、イーストウッドは、それをしない。あっさりと、淡々と描き、人が死に、場面が変わる。
映画の最後のほうに、「ただ、彼らのありのままを記録すること」というメッセージが出てくるけれど、本当にそれにつきると思った。
実際に体験していない、産まれてもいない私たちが、どんなに想像したって届かないところに、戦争も、そこに参加した人たちも、あるものだと思うから。
「ありのままを描く」というイーストウッドの姿勢は清冽で、尊敬してしまう。

(かなり贔屓が入ってはいるけれど)、本当に見ごたえのある、真摯な作品だと思う。アメリカ人である彼が、日本側の視点で、今度はどう描くのか。硫黄島のほうを見るのが今から楽しみだ。






posted by さやか at 00:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 洋画(映画) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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